未来も過去も書き換え可能!? スピリチュアル量子力学を考える〔運命論2022年版-2〕

 


〔2022/09/27筆。日付変更で上げ〕

最近スピリチュアル界で流行している説について考えます。

スピリチュアル分野で“引き寄せ法則”を主張する人たちが、「科学的裏付け」と称してよく論拠にしているのが量子力学です。

「世界は意識によって創造されていることが証明された。したがって思考は現実化する。望むものは何でも引き寄せて物質化できる、過去も書き換えらえる」
と言うのですが、さて本当なのでしょうか?

私が思うに、それはエセ物理学です。

何故そう言えるのか、当記事ではなるべく分かりやすく解説していきます。

量子力学の前提…物が観測で変わる?

先にお断りしておきますと筆者は理数系ではありませんし物理学については完全に素人です。
このため、もしかしたら細部には間違いがあるかもしれません。量子力学の専門家の方へ、用語や認識等に誤りがあればご指摘ください。

ただ自分で言うのも何ですが、昔から“一を聴いて本質を知る”のが得意なほう。
ターゲットをきちんと見据えた場合には、だいたいの核心:構造や真実性が感じ取れるという特技を持ちます。


そんな特技を用いて述べますと、引き寄せ法則を信じる人が根拠としているスピリチュアル量子力学――
「物質は観測で変化した。だから、思念だけで現実を創造できる、過去を書き換えられる」
は誤り
です。

と言っても、まさか量子力学の前提となった実験結果が間違っているなどと主張するつもりはありません。
世界中で大勢の物理学者たちが実験して得られた以下の結果は、とうてい覆せるものではないでしょう。

【二重スリット実験結果】
・物質のもととなる量子は、観測されるまで波と粒との二つの可能性として存在している
・ある時点で「波動関数の収縮(崩壊)」が起き、波・粒の可能性が崩壊して固定され、量子は古典物理学の粒子として振る舞うようになる

なんのこっちゃ?? と思われた方へ。
ここで説明すると長くなるので省きます。

二重スリット実験については、たとえばこちらの動画が雑学として分かりやすかったのでお奨め。

★【量子力学】二重スリット実験完全解説!いまだに解明できない「観測問題」の謎を解く『量子力学で生命の謎を解く』by ジム・アル-カリーリ・ジョン

(こちらのチャンネル運営者は別の動画で引き寄せ法則を支持するような主張もしていますが、概ね両論併記です。雑学としてたくさんの書籍を分かりやすくまとめられていて、YouTuber凄いなと思いました)

>ある時点で「波動関数の収縮(崩壊)」が起き、波・粒の可能性が崩壊して固定され、量子は古典物理学の粒子として振る舞うようになる

ということはどうやら間違いないようです。
ただその“ある時点”を当初「観測した時点」と解釈したことから、
「物は人が観測したことで初めて存在する?」
 ↓
「と言うことは、世界は人(などの意識体)が思念で創造しているのか!?」
 ↓
「世界は人が創造していることが物理学で証明された! 思考は実現する。未来は俺たちの思いのままだ。富豪になるのも永遠の命も、何でも叶う! 欲しい物は念じれば出現する! バンザイ、ワンダフォー!!!」
と盛大な勘違いする人たちが増えたわけです。

勘違い、と言うか、始めから上のような宗教教義を持つ人たちが自分たちの宗教を裏付ける“権威”として飛びついたのでしょう。
『思考は実現する』『シークレット(引き寄せ法則)』を裏付ける旗を掲げるために結論ありきの歪んだ解釈があったことは否めません。

ともかく物理学などよく分からない一般人は、上のようにもっともらしく解説されると信じる他ないと思います。
今も東大卒やハーバード大卒などの肩書きを持つ自称「物理学者」たちが、上の話を“事実”として喧伝しています。このため未だに「引き寄せ法則」の裏付けとして上説を信じる人が増え続けています。

しかし現代ではもう量子力学初期の解釈のうち、「観測者の意識だけが物質へ影響を与える」との説は否定されていますね。
(それなのに物理学者を名乗るスピリチュアリストたちはこの事実を決して言いません)

量子へ影響を与えていたのは「人の観測」すなわち「知性的な生命体の意識」に限定されていたのではなく、その他の原子干渉も含む環境要因であったことが分かってきたそうです。
このため現代では装置内を絶対零度にするなどして、なるべく相互作用が起きないように設定し量子計算しているとのこと。それには非常に高度な技術が必要。世界最先端の技術者たちが鎬を削っている分野です。日本人エンジニアさんたちの献身に感謝したいものです。

意図的に歪められた量子力学の理論

 
前記のとおり量子力学の実験そのものがフィクションだということは考えにくいですが、その後に噴出した学説には明らかに結論ありきの歪みがあります。

おそらく学者たちは、言葉のニュアンスによって一般人が「意識が物を創造している」と受け取るようにイメージ操作しています。
そのような学説が出た後に、一般人を装ったお手伝いの者たち(苦笑)が学説を権威として振りかざし、「思念は物質を変える。現金を引き寄せることも可能」などの過激な主張を叫んでいると思われます。

では、そもそもどうして量子力学は彼らの餌食となってしまったのか?

思うに、最初の二重スリット実験以降に奇妙な説が噴出したのは次のような論の不足――おそらく故意の前提無視によります。

1.観測者の定義が不明
…観測者は人間に限定されるのか、動物でもいいのか、単細胞生物やウイルスも含むのか? 無生物と意識ある生物との境界は?? また、それら複数の観察者が同時に観た場合はどうなるのか? 定義なし。

2.波動関数収縮後には変更不可、という前提が無視された
…干渉によっていったん波動関数が収縮し、量子が粒として確定された後は「観測」によって変更を加えることはできない。それなのに、何故か多くの人がこのことを忘れて「自分は世界の創造主になれる。何でも叶う。思念で現金も物質化できる」という主張を始めた。

物理学者が「2」の大前提を見落とすとは考えにくいので、意図的に前提を言わず、無知な一般人向けに詭弁を流布した不誠実な学者が大勢いたようです。
(今もいます)

例によって世界反転の魔術を使って人類の歴史を過去から書き換え、宇宙を独占しようと考えているあの集団の仕業だと思いますね。つまり、ここのところよく書いている悪魔崇拝サロンから出た集団のことです。

彼らが世界を裏側から支配する目的を持って共同活動しているということはほぼ事実。
当然、お金目当てだったりカルト思想の信者だったりで、彼らに服従する権威者も数多くいます。近代では学者やメディア経営者の多くが彼らの命令で動くロボットですから、学問に反して公の言論を歪めることなど朝飯前でしょう。


歴史は過去から書き換え可能!? あなたに他者の歴史を書き換える権利はない

話を始まりに戻しましょう。

量子の可能性はある時点で破壊され、以降は変更を加えることは不可となります。
ここで「以降は」と書いたため時間的な過程があるように受け取られるかもしれませんが、ある時点で粒子として確定した量子は、過去からずっと粒子だったことになります。

つまり、ある時点で世界が創造されたように見えるだけではなく、時間の概念を超えて過去も未来も書き換わるかのように見えるのです。

正しい意味での“色即是空”。
(色即是空とは「この世は無である」とか「アセンションで即・悟れる」と言っているのではなく、存在と非存在の二律背反は同時に真なり合うという意味でしょう。だからこそ、因が果を決定するわけです=二重スリットの実験通り)

よく言われることですが、仏教や古代インド哲学にそっくりな現象が明らかとなってきていますね。個人的には老子の思想にもよく似ていると感じます。
「そっくり」と言うよりは、古代人あるいはその知識を伝えた何者かが、どうやら21世紀の最先端物理学に優る知識を持っていたように思えます。

過去も書き換えられる? 自己中主義者の勘違い

やっかいなのは、現代人の勘違い。
この結論にも例の歴史修正主義者たちが喜んで飛びつき、
「歴史も我々が都合良く変えられる! 嘘を唱えれば現実に過去から歴史が書き換わる」
とお題目を唱え修正歴史を叫び続けています。

しかし残念ながら、量子力学上でもいったん可能性を失った現実を変えることはできないと言えるでしょう。
量子力学の実験ではある時点の決定が未来と過去にも及ぶ、と示されただけのことで、「人間の思考による干渉でいつでも何度でも、過去を好きなように改変できる」などと示されたわけではありません。

なお、波動関数の収縮が起きるのは“干渉”があった時点。その干渉とは、外部からの観察に限定されるものではないでしょうに。
と言うことは他者に観察されるより遥かに前に当事者本人たちによって可能性は喪失され、現実が古典物理学的に固定化されているのです。
その時点の出来事は、他者が知ろうと知るまいと永久に変わることはありません。

これは記録とも関係ない話。
その時その場にいた当事者たちが波動関数収縮させ“確定”させているわけなのですから、後世の人たちがどのように記録し解釈しようと、現実を変えることはできないということになります。
つまり理論上、(記録とは別の現実としての)歴史を書き換えることなど完全に不可能だ、ということです。

それにしてもいったい何故、歴史修正主義者たちは当事者を差し置いて、
「我々だけが歴史を書き換えることができる」
という傲慢な発想を持つのでしょうか?
何故か、「自分だけが創造主となる権利を持っている」と思っている。

おそらく彼らは世界にたった一人自分だけしか意識を持つ存在はいない、との妄想のなかで生きているのだと思います。
いわゆる哲学ゾンビの世界の住人です。
だから「自分だけに唯一、意識があり創造権がある」と信じることができる。そのため文字通りの神になったつもりで、破壊も殺戮も平気で行う…。

幼児は他者に意識があることを認識できないと言われていますが、彼らはずっと幼児レベルの思考で生きていることになりますね。

その人々の幼稚な思考の欠陥は、観察されるまで箱の中の猫は生きていると同時に死んでいるとする『シュレーディンガーの猫』実験が指摘した通りでしょう。

今はもう「原子も世界に参加している」と認めてもらえた(笑…)ようなので、「原子が発射された瞬間に猫の生死は確定している」ことに異論を唱える学者はいないのでは。
しかし、仮に初期で考えられていたような原子の干渉が全く無いファンタジー世界であっても、人間に観察される前に当事者である猫本人が干渉し現実が確定していることになる。と思うのですが? 

どうして物理学者たちは猫に現実決定権がなく、人間だけが、と言うより自分一人だけが世界の全てを創造する権利を持つなどと勘違いすることができたのか。
そこに疑問を持たない人々が存在したことが怖い。
生死が重なり合う『シュレ猫』を肯定するかのような奇説がたくさん登場したのも、彼らの極端な自己中心性・独善性のせいだと思います。


量子力学を厳密に解釈するなら、「未来は定まっている」ように見える

さて。
以降はご都合主義者たちの勘違いは無視して、量子実験を真面目に受け取ったうえでの運命論を書いてみます。

数々の量子力学に関する実験から明らかになったことを、日常的な言葉に言い換えて整理しますと
・この宇宙の全ての存在は、ある時点で確定されるまで在り様は決まっていない

・ある時点で選択されたとき(干渉によって波動関数が縮小したとき)、未来と過去にわたってその在り様が決定する

・ひとたび選択された在り様は、未来永劫(過去も)変更不可
となります。

――と、言うことは。
もしこの実験結果を厳密に読み解くならば、たいていの未来と過去はすでに定まっていることになりませんか。

何故ならマクロの世界において、他の原子に干渉されておらず、「可能性を失っていない」つまり在り様が定まっていない物などほぼ無いからです。

量子力学的にはミクロとマクロの境界はなく、実験で起こった二重現象は理論上、マクロの世界でも起こると考えられています。
それにも関わらずマクロの物質世界が安定しているのは、目に見えている物質とは全て干渉された結果の粒子でできており、「変更不可」の状態にあるからでしょう。
このように確定した粒子が集まってできている人間や、その人間が起こした出来事を、他者が思念だけで書き換えることは量子力学的に考えても不可能です。

「引き寄せ法則」や「歴史修正主義」を信奉する人々の主張とは正反対の結論となりました。

人間に未来選択の余地はない、とは言っていない

このように述べるとまた
「やっぱりお前は運命絶対論の一神信者じゃないか!!」
と反射的に受け取り攻撃してくる人がいると思うのですが、そうではないことご理解ください。

「人間に未来選択の余地が全くない」とは言っていません。

いったい誰がこのマクロの生物世界を確定してきたかというと、それこそ全生命自身でしょう。
全生命エネルギーのことを“魂”と呼んでもいいのかもしれません。この全ての魂が参加してこの宇宙を形づくり、自身の運命も選択し決定づけていると考えられます。

少なくとも西洋の宗教が説いている、宇宙の全てを創造している唯一絶対の神が存在しなかったことは証明されています。
(何故なら:もしも「過去から未来の全てを創った一神」が実在するならば、波か粒かが定まっていない量子が存在するわけがない。故に、この世界は一神が創ったものではない)

ただし厳然たる宇宙の法則は存在していたわけです。

一神の創造主はいない。
法だけがある。 
ということです。私の述べるこの考えは、ダルマ(法)思想に近いですかね。

なお私が思う「法」とはもちろん、人間の権力者が定めた規律のことではなく、一神の定めた戒律でもなく、たんに宇宙法則のことです。
その法に従うべきだ、と上から押し付けるつもりもなく、ただ「我々は自動的に法に従って動いている」という現象を観察的に述べているだけのこと。むしろ冷たく観察しています。

法律ではない自動法則は、悪事を犯す人にとっては救いがないでしょう。選択した結果が未来永劫消えないことになるので。
お願いごとを聴いてくれて過去の罪をチャラ(無かったこと)にしてくれる創造主を夢見ていたほうが、人は救いを感じられたのだと思います。だからキ教がこれだけ流行り、仏教人気がいまいちなのですね。


まとめ

 
長々と書いてきました。終わらないので無理やりまとめましょう。

これまでの話のイメージは次の図の通りです。あくまでも単純化したイメージで、正確性は欠きます。

現在の地点だけで「選択の余地がある」ということになります。

我々は瞬間、瞬間を選択することによって未来・過去を決定しているということですね。
そしてひとたび選択された未来・過去は確定し、古典物理学的になる。つまり思念で引き寄せたり書き換えすることは不可能。

結論としてやはり、因果律なわけです。
ただし選択の瞬間が厖大にあり、他者の選択の干渉も受けるため、人間の知能で答えが出せるような単純な因果律ではないことを覚えておく必要があります。
(単純に、「犯罪した者は来世で同じ目にあうから処罰の必要なし。虐待されている子は自分が前世で虐待したから自業自得、救う必要なし」などということは絶対にない)

また選択の余地がある、と言っても現実は確定した物で溢れており、マクロの古典物理学に縛られるため選択肢は限定されます。
このため願いどおりの未来を引き寄せるためには、紙に願いを書いて唱えるだけでは足りません。思念を集中させることは目標実現のための最低要件です。マクロの現実では、思念のうえさらに古典物理学の法則に則り、頭を使って計画・実行していく必要があるわけです。

もし、あなたの願いが、「蛮行フリーダム! 快楽殺人やりたい放題!」といった人類の価値観に反する目的であれば、当然に他人からの古典物理学的な阻止が入ります。

我がままな悪魔崇拝者の呪文だけが叶うように、このマクロ現実はできていないということです。
マクロ現実では、全ての量子をあなたが所有しているわけではないのですから。

〔補足・パラレルワールドについて〕


量子力学にはパラレルワールドの解釈もありますが今回は省きました。
パラレルワールドでの解釈は一部正しく、一部勘違いがあると感じます。詳細はまたいつか。

いずれにしろ、思念で未来を引き寄せるより行動が大事だということです。
…ものすごく当たり前で常識的な結論となりました(笑)。でも、真理とは一見、当たり前で取るに足らないように見えるもの。反転された世界をもう一度反転して眺める必要があります。


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